春。
それは5歳児を持つ親にとって、避けては通れない巨大プロジェクト「ラン活(ランドセル活動)」のキックオフの季節です。
我が家でも今年度に入って、各メーカーから資料請求したランドセルのカタログがドサッと届きました。
その数、実に十数冊。
リビングの棚の上を占拠するカタログの山を見た瞬間、COO(妻)と私は完全にフリーズしました。
「種類が多すぎる……」
「刺繍が可愛い」
「こっちは本革だ」
「背当てのクッションが……」
いざ、ラン活と気合いを入れていたにもかかわらず、情報過多(オーバーフロー)により、数日間夫婦でランドセルの話題から目を背ける始末。
夫婦揃って完全に「決断疲れ」を起こしてしまったのです。
実際に、妻と「あの色のやつはどこのだっけ?」と話しても、どれか分からず仕舞いだったこともありました。あまりに膨大な情報量に相談しようにも共通認識すら持てずにいたのです。
さて、ビジネスにおいて、多数のベンダー(業者)から最適なシステムを導入する際、カタログをパラパラめくって「なんとなく良さそう」で決めるCPOはいませんよね。
絶対に失敗できないこの「大型調達プロジェクト」を成功に導くために、私はビジネスの基本ツール「RFP(提案依頼書)」を家庭に私物化することにしました。
全3回にわたる「ラン活ハック・シリーズ」。第1回は、感情を排して候補を絞り込む「RFP(ベンダー選定)編」です。
【今回私物化するビジネススキル】
今回、家庭という現場に導入(私物化)するスキルは以下の1つです。
RFP(Request for Proposal:提案依頼書)
システムや業務を発注する際、発注側(親)がベンダー(メーカー)に対して、「こんな要件を満たしたものを、この予算で提案してくれ」と提示する仕様書のこと。
これを「カタログを読む前」に夫婦で作成することで、ブレない評価軸(フィルター)を手に入れます。
【なぜ「とりあえずカタログを見る」と失敗するのか?】
なぜ、カタログを最初に見ると決断できなくなるのでしょうか?
それは、各社のカタログが「マーケティングの魔法」に満ちているからです。
オシャレな写真、職人の熱いインタビュー、限定カラーの煽り文句。これらを見ていると、本来の目的(子供が6年間快適に使えるか)を見失い、「親の見栄」や「親のデザインの好み」という感情的な評価軸にすり替わってしまいます。
これを防ぐためには、「情報に触れる前に、我が家の絶対条件(スペック)を文書化しておく」ことが不可欠です。
RFPという「足切りライン」を設けることで、十何冊もあるカタログの8割を、一切の迷いなく資源ごみへと送ることが可能になります。
【実録・我が家の「ラン活RFP」作成フロー】
では、実際に我が家で作成した「ランドセル調達RFP」の要件定義(スペック)を一部公開します。
我が家のRFP(絶対要件一覧)
1. 予算(Cost)
80,000円以内
2. 重量(Weight)
1,200g以下
3. 容量(Capacity)
A4フラットファイル対応(※大容量モデル)
4. 素材(Material)
人工皮革(※本革は重く、手入れが難しくなるため不可能なため)
5. 保守運用(Maintenance)
6年間無料保証が付帯していること
RFPを使った「冷酷なベンダー選定」の実施
このRFPをCOO(妻)と合意した上で、あらためてカタログの山に向き合います。
やり方は簡単です。カタログの写真やデザインは一切見ません。
巻末の「スペック表」だけを開きます。
「A社、デザインは最高だけど重量が1,400g(コードバン)。はい、RFP違反で不採用。」
「B社、軽いけどA4フラットファイルが入らない。不採用。」
「C社、全要件クリア。よし、最終コンペに進出。」
実際に妻もどうせなら本革のものを、と考えていたようですが、それは重いから条件は満たさない、とあくまでスペックで選択肢を狭めていきました。
結果として、カタログは減っていきましたが、それでも十分な選択肢が残りました。
このように、RFPというロジカルなフィルターを通すことで、カタログの山は、わずか1/4にまで絞り込まれました。
親の脳内メモリ(認知負荷)は一気に解放されたのです。
【これぞ正しい私物化】
ラン活という巨大プロジェクトにおいて、最も消耗するのは「比較検討」の時間です。
「なんとなく良さそう」という感情の海で溺れる前に、RFP(提案依頼書)を作成して「我が家の基準」をバシッと定義する。
ビジネスの現場で培った「ベンダー選定のノウハウ」を、愛する我が子のための最高のランドセル調達のために惜しみなく投入する。
これこそが「正しい私物化」です。
しかし、親の要件定義が終わっても、安心するのは早すぎます。
次回、【第2回:MoSCoW分析編】では、最も厄介なエンドユーザー(5歳児)の「金色のランドセルがいい!」「光るやつがいい!」という無茶な要件追加を、平和的にコントロールする情報統制術を解説します。


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